ストレス学説とストレスのしくみ

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ストレスについての記事第2弾です。前回『ストレスの話』では、ストレスとは何なのか、何がストレスの原因で、どんな反応が起こるのか、という点をまとめました。今回は、ストレスという概念を一般に広めた「ストレス学説」の話と、なぜストレスという現象が存在するのか、という点を勉強したので、まとめていきたいと思います。

↓↓↓参考書籍はこちら:杉 晴夫『ストレスとはなんだろう』

参考書籍『ストレスとはなんだろう』について

本書籍では、ストレスという概念を広めた「ストレス学説」誕生の経緯や、ストレス学説の生みの親であるハンス・セリエやその弟子たちのストーリーが語られていて、物語としても面白い書籍でした。

書籍では、ストレスを受けた際に体の中でどのようなことが起こっているのかという点を詳しく知ることができますので、興味のある方は手に取っていただくことをおすすめします。

この記事では「ストレス学説」の偉大さと、セリエたちが発見したストレスのしくみを、私なりに解説したいと思います。

ストレス学説の無かった時代

ストレス学説は1930年代にハンス・セリエによって提唱されました。

この時代は「すべての病気は病原菌によって引き起こされる」と考えられていました。そのため、原因のはっきりしないよくある症状、例えば、〈発熱、舌の荒れ、関節の痛み、気分がすぐれない、胃腸障害〉といった非特異的な症状の患者は、病院に行っても「気のせいだ」と、とりあってもらえなかったそうです。

今では生活習慣病が一般的に知られ、その原因が生活習慣やストレスにあることがわかっていますが、ストレス反応という「外からの有害な刺激に対して身を守る仕組み」があり、精神的なストレスが原因で体に不調が起こることをセリエが発見し「ストレス学説」を提唱してくれたからこそ、病院に行けば精神面からも病気の原因を調べてもらえるようになったのですね。

なぜストレス反応という現象が存在するのか

ストレス反応は人間だけでなく、動物たちも持っていることが知られています。では、ストレス反応は動物たちが生きる上でどのような役割を持っているのかを考えてみます。

生き物には体内の環境を一定に維持しようとする「ホメオスタシス」というはたらきがあります。このはたらきはホルモン分泌や自律神経系によってコントロールされるのですが、有害な刺激(ストレス)を受けた時、体はホルモン分泌や自律神経系のはたらきを狂わせ、失調させることでストレス反応を起こします。これは「警告反応」といいます。

野生動物の場合は、外敵に襲われたり、けがをしたときにこの「警告反応」が現れます。この反応による体調の変化のおかげで、危険を回避したり、体を休める行動をとり、結果的に自分の身を守ることにつながります。

しかし人間の場合、外敵に襲われる心配はありませんし、ケガや病気になっても病院で直してもらえるので、このはたらきは人間にとってあまり意味がないといえるでしょう。そして、現代の人間にとって大きな問題になるのが、逃れることができない「精神的ストレス」になります。

ストレス反応の3つの段階

ストレスの原因から逃げられず、有害な刺激を受け続けた時、体は次のような反応を起こします。

①警告反応期数日ストレスに晒されると現れる最初のストレス反応
②抵抗期数週間ストレス反応が弱まる一旦の安定期。体がエネルギーを作り出し、ストレスの原因を取り除くチャンスを得る。
③疲憊期(ひはいき)最終段階長期間に渡ってストレスに晒された体が限界を迎える。抵抗力が失われて警告反応期と同様のストレス反応が現れる。最悪の場合死に至ることも。

先に述べたように、ストレス反応は自律神経系の失調によって起こります。社会生活の中で長期間精神的ストレスに晒され続けると、自律神経系の失調が続き、以下のような病気につながります。

  • 心臓の異常・・・不整脈、心不全 など
  • 血液循環の異常・・・血行障害、円形脱毛症 など
  • 消化器系の異常・・・消化不良、胃腸障害、胃潰瘍 など
  • 免疫機能の低下・・・感染症、発がん など
  • 情緒行動の異常・・・食欲不振、情緒不安定、うつ病 など

精神的ストレスへの対処

精神的ストレスがどのように自律神経系に影響を及ぼすのかはという点は、私には説明が難しいので書籍を読んでいただければと思います。

要約すると、脳から自律神経系にストレスが加わっていることを伝える「有害な神経連絡回路」があり、この回路はストレスが無い時には眠った状態ですが、思い悩むことで眠りから目覚めます。慢性的に精神的ストレスを受け続けることで、この回路が「太く」なってゆき、自律神経系はより弱いストレスからも影響を受けやすくなってしまうわけです。

体には使っていない器官が退化していく廃用委縮という機能があり、この回路も使わなければ徐々に退化してストレスの影響を受けにくくなります。つまり精神的ストレスを気にしなければ自律神経の失調から回復できるということです。

有害な神経連絡回路を使わない

精神的ストレスを気にしない、思い悩まないほうが良い、というのはわかっていても難しいものですよね。

ヒントになるのが睡眠中の脳波です。人間は起きているとき様々な精神活動をしていますが、深い眠りに入ると精神活動が減り、脳が休息をすることができます。

この深い睡眠と同じ状態を意識的につくることができるのが瞑想です。精神活動は脳波に表れます。修行をした僧侶の瞑想中の脳波は深い睡眠時と同じ波形であったそうです。つまり、瞑想にはストレス解消効果があり、精神的ストレスは意識の集中によって解消できるといえます。

神経連絡路を途中で遮断する

また、世の中には精神的ストレスに耐性のある「意志の強い人」がいるとは思いませんか? 精神的に動揺した時、すぐに顔色に反応が出てしまう人もいれば、意志の力で顔色を変えないようにコントロールできる人もいます。

本書では、これは精神活動に対して「反応を起こす回路」があるとともに、「反応を抑制する回路」があるからだと説明しています。また、この回路は意志の力でコントロールできるはずだと論じています。

この部分については私の理解が不十分なのですが、前回紹介した「リフレーミング」で物事の捉え方を変えることで、ストレスを感じにくくすることができるというところに通じているのかなと考えています。

おわりに

わたしは本書籍でストレスのしくみの一端を知ることで、自分のストレス反応について客観的な視点で捉えて対処することの助けになりました。

私たち現代人は誰もが当たり前に知ってるストレスという知識ですが、ストレスが知られていない時代に、精神が体に悪い影響を与えることを証明し、学説を提唱したセリエはすごい発想の持ち主だと感じました。私たちはセリエのおかげで、ストレスに対処しながら幸せに生きる方法を学ぶことができるんですね。

ただ、「反応を抑制する回路」の部分については、一読すると意志が強ければストレス反応を我慢できる、と捉えられるのですが、私の経験上、我慢でストレスが解決するとは思えないので、このあたりはもう少し勉強する必要がありそうです。

また、ストレス反応について詳しく学ぶには、体のしくみを知る必要があります。私は専門知識が乏しく、本書籍だけでは十分にストレスの仕組みを理解できなかったので、機会があればさらに勉強してみるのも面白そうだなと思っています。

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